I'm dentaltechnologist & system developer since 1997 of professional
experience . I'm interested in all kinds of system development, but
my major focus is on designing databace for medicaldental education
and research. I also have skills in other fields like CAD/CAM, designing
mobile & tablet interfaces or web development.
創業19期を振り返る新たなミッション元年
2023年を振り返って
基本的な日常生活動作(BADL)は,食事・移動・整容・トイレ・入浴・歩行・階段・着替え・排便・排尿の10項目で評価される.このようなBADLを定量化して可視化することは,「高齢者の要介護前期」や「慢性疾患患者の小康期」等における増悪(より悪化していくさま)を予知(アドバンスドケアプランニング)することにつながるだけでなく,小康(どうにか穏やかなさま)と増悪を繰り返す境界において,介入すべき医療行為の最適化に寄与する.
たとえば,要介護前期では,歩行,食事などの活動,入浴,排便などの保清,更衣,口腔清掃などの整容において,それらの多くは自助による生活が可能である.歯科領域でも,いわゆる一般的な治療や各種機能訓練が有効な場合も多い.一方,要介護後期においては,咀嚼や嚥下の機能低下により窒息や誤嚥の頻度が高まり,栄養摂取が困難になることで体重減少や口腔清掃のパフォーマンスが低下することによる口腔内環境の悪化などに起因して,口腔細菌に汚染された唾液による誤嚥性肺炎が多発し,生命予後悪化の可能性が高まる.さらに,認知機能や日常生活動作が極端に低下すれば,義歯の装着自体が困難になる場合もあり,低下した口腔機能に合わせた食形態の調整や摂食支援,口腔ケアへの介助が必要になっていく.
このように,専門職が介入する行為を大きく転換する局面を適切に見極めることは,医療や介護における様々な場面でとても重要であるといえる.しかしながら,このようなBADLを第三者が24時間もの間,継続してモニタリングするにはあまりにも人的負担が大きく医療経済性も低い.
以上のように,小康と増悪との境界判定は,個々の健康状態に大きく左右されるために一般化された機械的な対応ができないことから,IoTディバイスのようなスクリーニングツールを応用した個々のBADLの定量化が課題解決に効果的であるといえる.そして,このようなBADLを適正に24時間モニタリングするためには,屋外環境等で利用されるIoTモニターとは異なり,特に,就寝時や静養時においてもその邪魔をすることがないよう配慮されなければならない.すなわち,IoTウェアラブルディバイスが生体にストレスなくフィットすることは,生活の質向上の視点において極めて重要な「価値」であり,装着快適性を具備する新しい価値創造への挑戦が,これから本格化するであろうIoT市場において,後発新商品の競争力を優位に獲得するうえで必須条件であると考えている.
これまで歯科医療専門職は,口腔内において解剖学的,生理学的,形態学的に違和感なく可撤性義歯などの装置を製作することにおいて,このような「価値観」を追求してきた技術と実績を持っている.このような局面において口腔工学技術を応用する医工連携によって,全身の健康管理に寄与することができる製品開発による社会貢献は,まさに我々デンタルチームに課せられた使命に合致する.
厚労省は2025年には団塊の世代が75歳以上になることを転機に、地域包括ケアシステムを推進していくとしている。それまでにしっかりとした準備をしていくことが我々のあらたなミッションである。
創業18期を邁進の今に思う歯科技工界変革への期待
2022年までの17期を振り返って
1. 歯科技工士の職業観と存在意義
医療と経済について考える際と同様に,歯科技工経済に対して直接影響を与える利害関係者を正確に把握し,そのニーズを正しく理解することは極めて経済合理的である.このような経済活動の利害関係者で,費用の請求先が顧客であると考えるこの点において,歯科医師の顧客は患者であるが,歯科技工士の顧客は歯科医師であり患者ではないことをまず,あらためて確認しておきたい(図1).もちろん,歯科技工士が患者の健康上の課題解決に関与することにやりがいを感じ,社会の期待に応えたいという思いには強く共感できる.そのうえで歯科医師と歯科技工士では『顧客が異なる』ことを意識すれば,経済活動の価値観や優先順位が歯科医師のそれとは異なることを正しく意識できるようになる.例えば,技工をデジタル化する場合,『製品の均質化』や『経済性の高さ』,あるいは『作業の省力化』などをまず優先するかもしれないが,これらはあくまでも第三者の価値観である.我々の視点はまず,『高品質化』や『高付加価値化』,あるいは『自由な発想の具現化』がこれまでのデジタル化で可能であるかどうかをそこに追求すべきである.なぜなら我々技工士は,たとえそれが技術的に困難であったとしても,時に不経済であっても,顧客である歯科医師の尊い思いに寄り添い,付加価値と独創的なアイデアでその課題に果敢に挑むことが許されたこの仕事に対して,歯科医師から高く評価されるだけでなく,歯科医師の思いと同様の尊さとやりがいを医療人として共有できる.このことこそが今も昔も歯科技工士の誇りと価値観だからである.以上のようにまずは,口腔工学が歯学の単なる縮小複製ではなく,独立した価値観に基づく個性的な学問体系として歯学系に存在することをすべてのステークホルダーに示すことが,次世代歯科技工変革の起点になる.
2. 歯科技工士の価値観と矜持
したがって,そもそも①患者の前に立ち,あたかも歯科医師のような仕事をすることが歯科技工士の悲願ではないということ,ましてや,義歯製作の技術力において,もしかすると技工士の方が優れているかのような議論の中で,自身の顧客である歯科医師を越えて,②歯科医師の顧客である患者に対しての直接的な越権を伴う,そもそもの違法行為は,本来歯科技工士が目指すべきスキルではないということ,また,たとえ歯科医師から越権の依頼があったとしても,歯科医師法以外の法律に抵触することで社会に誤解や損失を与えることがないよう,現行法に照らし合わせて正しく教育し,③歯科医師とは異なる専門職としての自覚と責任を全うすることによってこそ,歯科技工士の矜持と存在意義を確立できることを今こそ明確にしたい.
3. 業務の拡大と質向上,歯科技工士が目指すべき方向性とは
歯科技工士の将来展望において,いわゆる対面行為,訪問診療帯同,検査・訓練行為などに対する歯科技工士へのタスクシフトは,医師の働き方改革に関する法律改正に伴う『歯科医師の業務拡大』を考える際に歯科医師の業務仕分けにおいて議論される課題である.つまり,歯科技工士の業務拡大は歯科医師が考える課題であり,歯科技工士が主体的に解決できる課題ではないことは明らかである.特に,検査や訓練などの領域においては,それがなぜ歯科衛生士ではなく歯科技工士にそのタスクをシフトする必要があるのか、そして、そのことによってえられる歯科医師側に与えることができる利点を歯科技工士本人が明示できなければ,歯科技工士にタスクシフトされることはないことも理解しておかなければならない.一方で,デジタルデンティストリーの本質は,単にCAD/CAMで補綴装置を作ることではなく,主訴や検査結果あるいは,画像や形状などの医療情報をデータベース化し,それを利活用することによって医療の質を向上させることである.そして,この本質に対していかにして歯科技工士が関与するのかは,むしろ我々自身が主体的に考えていかなければ,決して誰も考えることはない課題である.
4. なぜ歯科用CADの教育だけではだめなのか,デジタルリテラシー教育の必要性
例えば歯科医師は,補綴治療以外の場面で歯科技工士と関わることがほとんどない.つまり,これまで歯科技工士は断片的で不連続に歯科医療にかかわってきたことになる.その結果,この間に医療情報量の不均衡が歯科技工士に発生しやすく,歯科技工士は医療課題の本質をよく理解しないまま,ただ装置製作にのみ専念することに陥りやすい.このような情報量の不均衡による患者アウトカムの損失を歯科技工士はこれ以上放置してはならない.したがって,①医療情報データベースが出力する『治療計画書』が『歯科技工指示書』のように機能すること,そして,日常的にデジタル化される②スタディーモデル(STLデータ)の管理が,歯科衛生士から歯科技工士へと移譲されつつあること,これら表面的な二つの理由だけを考慮しても,歯科技工士は,医療情報をチームで共有するためのデータベース構築の役割を積極的に担い,医療の質向上の基盤作りに直接関与できる,この好機を絶対に逸してはならない.
5. 歯科技工のデジタル化,デジタルデンティストリー20年間の功罪
確かにこれまでのデジタル化を経て,技工の省力化は推進されてきた.そしてこの期間に,歯科技工士の存在意義をこのデジタル化の潮流にどのように適応させるのかについて,様々な議論がなされてはきたが,2021年度歯科技工士国家試験受験者数が872名であったことを我々は真摯にそして,極めて重く受け止めなければならない.歯科技工士という職業が継続し,発展していくためには,まずは高校生に選ばれる職業であり続けることが必要不可欠である.しかしながら,決められたルールに基づいてのみ機能する歯科用CADを我々技工士も使い続けた結果,職業である歯科技工士は役割を終えて,先人からの技術伝承すらも途絶えてしまうかのような印象を社会に与えてしまったことを歯科技工士は猛省しなければならない.本来の歯科技工士の仕事は,歯科用CADを操作するだけの仕事とは異なり,①医療課題解決策の因果関係を十分に理解することに努め,②さまざまな状況に応じてどのような提案ができるかを考え,③自身の歯科技工を自由自在に具体的な形にすることであったことを決して忘れてはならない.したがって今,高校生に示すべき姿は,医療の質向上の目的ためにCADを自由自在に使いこなし,装置の機能に対して独創的なアイデアを巧みに実装することに一生懸命になる姿である.加えて,エレクトロニクス工学やデータサイエンス科学,あるいはメタバースやロボットは,『技工技術がデジタル化』されるからこそ連携できることを好機と考え,これら周辺技術を活用した医工連携イノベーションによってワクワクする未来を歯科技工士のひとりひとりが思い描くことができるようになる姿である.
6. 口腔工学の確固たる存在意義
このような『自身の歯科技工を自由自在にデジタルに置き換えて形にするスキル』を獲得するためには,①自由なプログラミングが可能な高汎用性の工業系3DCADの形式知教育のみならず②装置製作に関する十分な歯科技工暗黙知教育が必要になる.そして,チーム医療情報共有のためのデータベース開発では単に③テーブル設計や正規化などのデータベースリテラシー教育だけでなく④歯科治療や歯科技工の手順あるいはチェアとラボのデータ連携に対する専門的な教育が必要になる.これら①から④の調和のとれた多様な人材育成の実践こそが,医工学際における口腔工学の確固たる存在意義を社会に示すことへとつながる.
7. メディカルマインドを持ったSociety 5.0時代のエンジニア像と歯科技工士の新しいビジネスモデルの確立へ
以上のような歯科医学専門的なプログラミングリテラシー教育によって,医療の質向上の役割を担う『メディカルマインドを持ったSociety 5.0時代のエンジニア像』が見えてくる.歯科医師が患者の気持ちに寄り添い,健康上の課題解決やその緩和によって健康寿命の延伸に寄与する存在であるとすれば,①その支援を許されている歯科技工士の仕事も同様にとても尊いということ,そして,『デジタル化歯科技工』の魅力とやりがいを正しく謳歌することが,すなわち②『歯科医療の質向上』にもつながるということに歯科医師や高校生が共感できれば,このような人材育成への理解や興味が社会へと深まっていく.
2022年12月24日
ソフトウェアに収束する多くの仕事の未来
2021年までの16期を振り返って
2020年までにわが国の第5期科学技術基本計画では、内閣府からSociety5.0の実現に向けた『仮想空間と現実社会との密接な連携』が提唱され、科学技術イノベーション政策の推進に向けてこれを担う優れた人材を絶え間なく育成、確保していくことが不可欠であるとしています。また、2021年度より文科省は、実社会の課題解決に対して教科横断的な学習のアウトカム(学習成果)を生かしていくための教育を新学習指導要領にて具体的に推進するとしています。さらに経産省ではより具体的に「学際融合・探究・プロジェクト型」を特徴とする学習手法として、世界共通の教育改革のキーワードの「STEAM」(Science(科学),Technology(技術),Engineering(工学),Arts(人文社会・芸術・デザイン)and Mathematics(数学))の融合型教育を挙げ、STEAMライブラリーを公開するなど積極的にこれを推進しています。
このような考え方には、1990年代の米国において、AIやロボティクスに代表される次世代科学技術の担い手を育成するための科学教育の分野でSTEAM型教育が広く認知されてきた背景があるといわれています。日本では2016年に行われたG7教育大臣会合の倉敷宣言にてSTEM教育が言及され、また、2019年の統合イノベーション戦略によって政府文書にも登場することになり、2020年のプログラミング教育必修化が発表された経緯がありました。これは国際競争力の視点において情報工学的なモノの見方や考え方を養うことが単に必要とされるということだけではなく、実際に多くの仕事が多少の差はあれプログラミングと向き合うことが要求される具体的な未来が近づいてきていることに他ならないのではないでしょうか。
今後、小学校・中学校のみならず高校でも2022年度から「総合探究」「理数探究」「公共」の新教科がスタートし、教科横断的で探究的な学びが重視されていくことになる一方で、教育者のためのプログラミング学習機会の不足が大きな課題の一つになりつつあります。 このような国策の中その課題が未解決のまま、次世代科学技術が多くの仕事を自動化することで、技術者に求められるスキルが変化していく世界的潮流に巻き込まれつつ、人材の資質をこの要請に見合うものにできるかどうかをすべての教育機関が急激に問われています。近い将来我々のフィールドにもこのような有望な人材が集まってくるよう、特に歯科技工士はこれまで以上により魅力ある職業へと転換していく必要があるのではないでしょうか。
歯科において、AIやロボットが共存するICT活用の日常では、むしろ、これまではできていたことができなくなることを感じる場面に遭遇し、きっと『自分ならもっとこうする』などの創造性が芽生える場面を経験することになりそうです。与えられた道具に工夫すべき点が見えてくるようになることは、我々技術者であればなおさらのことではないでしょうか。従って、工学と医歯学の学際における研究領域では自由にプログラミングができなければならないことはきわめて自然な流れであるように思うのです。つまり、いわゆるCAD/CAMと医歯学との関係において、これを研究領域へと昇華させるということは、医歯学をプログラミング言語で表現するということに他ならないのです。我々は、プログラミングに深くかかわることで、自分たちがいつでも、道具を使う側にも創る側にもなれることを目指す必要がありそうです。メーカーから提供されたツールを使うだけの側から脱却して、AIやロボットでは到達できない人間らしい発想やひらめきを自分たちで体験したり具体化したりすることによって、自らをより高みへと導いていく使命と責任があるように思うのです。
我々は2008年より、文科省の教育改革プログラムや様々な医歯薬学系学部、大学院の教育改革関連システムの企画、開発を10年以上にわたり行ってきました。2016年には著書の中でプログラミング教育の重要性について提案を行い、同時に歯科技工士の歯学全体にわたる教科横断的な教科再構築の必要性についても言及してきました。同年、岡山大学では、わが国で初めて独自にクラウン製作用にプログラミングした本格的な汎用CADのプラグインを使ったデジタルワックスアップ実習もスタートしてきました。そして翌2017年には、歯科技工のデジタル化とは仮想空間でその臨床的技術を発展させることであることを教育セミナーや商業誌にて重ねて強調してきました。近い将来、歯科用CAD/CAMでは、複雑な概念や重要な法則から解放されることで、より便利にそして簡単に装置を製作できるようになっていくことでしょう。しかしこのような商業用CAD/CAMでは、論理的に歯科補綴学を教育することは困難なのです。歯科補綴学の学習に利用できるデジタル教材が必要になるとき、あるいは歯科用CADを使う側に『創る側の視点』が芽生えるとき、少なくとも『CADを使うだけの歯科技工』から『CADで探究する歯学』へとさらなる未来をイメージする必要性がでてくることになりそうです。
2021年6月8日
創業15年を迎える我々の存在意義とは
職業観は人によって千差万別ですが、例えば私にとっての職業は社会と関わるための道具であるような気がしています。 そして私たちはこのような関わりによって、時には喜び、時には反省や後悔を重ね、 社会人として、あるいは人として、やがては『立派』になっていくのだと思うのです。 もしかすると私たちは社会と深く密接にかかわることでしか、人間的な成長はないのかもしれないとすら思ってしまいます。 人によっては、遊びや趣味を挙げることもあるかもしれませんが、幸か不幸かそれが仕事なのだと考える方も多いのではないでしょうか。 ですから私も『孤島に取り残された少年』ではいくらよわいを重ねてもおそらく稚拙な大人になってしまうと、つい思ってしまうのです。
私にとって仕事とは、それを通して『立派』になり、その対価として『お金を稼ぐ』こと。 今さらなのですが、この2つが私が毎日働く理由なのです。 仕事を通して私たちが日々成長し、『立派』になる必要がある理由は、多くの人がやがては親になるからでしょう。 また私たちが、『お金を稼ぐ』必要がある理由は、何よりまずは親から経済的に独立するためでしょう。 そしてやがてはそのようなチャンスを『次の世代に与えること』ができるようになるためでしょう。 先人たちはこのようにして脈々と次の世代を育んできたのです。 ですから、やがて『立派』になるために学習の機会に恵まれることはとても尊い。 そしてもしも、その教育にたずさわる機会に恵まれることがあるならば、それはきわめて幸運なことなのです。
弊社は2020年に創業15年を迎え気持ちを新たにしようとしていますが、この創業当初の志にほころびはありません。 私たちが次の世代を教育できる時間には限りがあります。一方で伝えたいことは『山ほどある』わけです。 そこで、教育を2つに仕分ける考え方が必要になってきます。 つまり、専門の教育者が対面でしっかりと時間をかけて、 『手取り足取り』教えなければ伝わらないことと、環境さえ整えば自己学習できる『そうではない大部分』との仕分けです。 経験や知恵、勘どころ、微妙な感覚や絶妙なタイミングといわれるところは対面でなければ絶対に伝わらないということです。 これには膨大なエネルギーとそれなりの時間が必要で、効率化などとは無縁の領域でしょう。 ですから重要なことは教育で『手取り足取り』のリソースをしっかりと確保していくためには、 そこから『そうではない大部分』をどんどん抽出しなければならないわけです。 弊社は、この『そうではない大部分』を情報技術を使って教育する手法を提案している企業です。 このような活動によって、教育者の努力が結実し、学習者の目標が達成していくことこそが、 我々の存在意義であり、この幸運を堪能することこそが、弊社の存在理由なのです。
2020年5月8日
義を見て為ざるは勇無きなり
正しいと思うならば、信念を持って行動に移せ
大学がどのような人材を育て導いていくのか、そして企業は産業の未来をどのように描き目指すのか、この両輪がうまくかみ合ってこそ初めて私たちの未来が見えてくると思うのです。もしかするとアナログで完結する産業はやがて衰退していくのが時代の趨勢(すうせい)なのかもしれません。このような時代の真っただ中をたくましく生き残る歯科技工士には、デジタル機器を支配的にコントロールしていくことしか勝ち残る道はないように思うのです。装置の設計、 製造、修理、加工に活用されようとしているAIやCAD/CAMソフトウェア、あるいはデータベースなどのデジタル機器を支配的にコントロールすること、それはまぎれもなくプログラミングなのだということです。従来の技術をプログラミング言語で表現できる人材が集う産業は、これはもはや衰退ではなくなります。これからの近代歯科技工学とは歯科医学とプログラミング工学とを両輪として発展すべき学問なのだと思うのです。私たちはこのような学際において、歯科技工士にしか成しえない、歯科医師のライセンスとは異なる豊かな専門性を全力で開花させるべきなのだと思うのです。
このような構造改革によって、我が国の歯科技工士が全世界に先駆けて高い競争力と強いリーダーシップを獲得することで、先頭に立って世界中の人々の幸せに貢献していくこと。この目的のために我が国の歯科技工学を次のステージへと発展させること。これが私たちの目標なのです。
これまでの歴史が示すように、具体的なビジョンを示し、自ら矢面に立てる人材が世の中を切り開いてきました。
受け売りや聞きかじりで、自分もそう思っていた、知っていた、これからやろうと思っていたというのでは絶対に勝ち残っていくことはできません。いくら良い持論をうたっても、たとえすばらしい解決策を出すことができたとしても、
自分が矢面に立って仕事を達成できるという自信がないのであれば、それは無責任な意見だということになってしまいます。 崇高な戦略も、輝かしい展望も単に言うだけなら簡単であり、ただ正論を振りかざすだけでは絶対に人の心は動くことはありません。
立派な志は、実際に実現させなければ、まったく意味がないのです。
2005年創業の際に自ら決めたことを忘れてはいないか。
曇りなき志をもち続けることができているか。
これからの10年に目を向けて鼓舞する。
令和元年7月吉日
目の前のAI。その向こう側に立つ優れた人材。
私たちが道筋をつけることでその日に向けて準備する
ビッグデータやCAD/CAMそしてAI(機械学習)など、これまでと違うことを学ぶことは、決して容易ではないですが、デジタル技術(ICT:情報技術を利用した産業やサービス)の進化とともに歯科技工士も進化していかなくてはならないのです。
私たちは何世代もかけて技術の試行錯誤を繰り返し、ナレッジ(知識や知恵)を育み培ってきましたが、今日の急激な機械化によって自分の技術エッセンスをデジタルではうまく表現できない時代がもう来ているのではないでしょうか。これまでのようにそれが材料の進歩であれば、それらを個人技術のナレッジの一部にうまく吸収していけるのかもしれませんが、昨今の潮流は、歯科技工士から技術だけでなくナレッジそのものを無用なものにしようとさえしています。
一方で、AI(深層学習=ディープラーニング)で提示する課題解決法以上のナレッジを人が考え出すことができないからこそ、それによって装置の品質が担保(均質化)されるのだとして歓迎されていくのかもしれません。つまり、遅かれ早かれ、誰かが提示する数値に従いさえすれば、あまり深く考えることなくより最適な装置を機械生産することができるようになるのだということです。実はそう遠くないこのような未来には、私たちの技術やナレッジ、これまでのような教育や文化は本当に不必要になってしまうのでしょうか。
AIの仕事は、データセット(母集団)に対して過去の失敗成功モデル(データ分析で抽出した価値を意思決定に利用するための手法)をもとに、新たに与えられたデータから可能な限り最も精度の高い未来を予測することですが、だからと言って、AIは預言者ではありません。特に、異なる特徴をもったデータセットに対して同じモデルを適用しても最適な未来を予言できるほど万能ではないのです。そのためにとても重要なことは、入力データにとって、その未来が最適であるように成功のためのモデルをチューニングすること(高い確率で最適な結果が得られるように調整すること)なのです。モデルがデータに対して正確にチューニングされればされるほど、より最適な成功の予測を得るためのアルゴリズムを獲得できるということになります。
通常、このようなチューニングは試行錯誤の繰り返しなのです。全ての産業において、AIの向こう側にはこれまでのナレッジを十分に理解した、優れた人材がいるのです。そして、最適な成功の予測を得るためにプログラミングによって試行錯誤が繰り返されているのです。経済と医療、医学と工学の間にあって歯科界の代表として、国民の健康と幸せのためにデジタルデンティストリーの万一のミスリードや暴走を抑えて、さらなる発展や進歩をより良い方向へとバランス良く拮抗させていくことができるAIの向こう側に立つ人材の育成。そのような資質を有する新しい歯科医療従事者の育成がなければ、この新しいテクノロジーには対応できないと思うのです。いま、私たちがその道筋をつけ、その日に向けて準備していくことが必要なのだと思うのです。
令和元年8月吉日
創業当初の志にほころびはないか
2018年までの13期を振り返って
先日、「なぜ、スキャンデータの拡張子にはいろいろなものがあるのか?」と題して解説してほしい旨、クインテッセンス出版から執筆依頼をいただきました。最近は、口腔内3Dスキャナーを中心としたデジタルデンティストリーの広がりを背景に情報技術に関する解説の依頼も増えてきました。もしかするとそれは、急激なデジタル化によって基礎理解が希薄なままに最新機器を活用しているのではないかということの危機感のあらわれからなのかもしれません。実はこの依頼が思ったよりも大変で、とても貴重な経験になりました。「口腔内スキャナーでスキャンして得られるファイルの拡張子が、メーカーごとに違うのはなぜか?」というシンプルな問いに対する解説は、どうしても学際的にならざるを得ません。そしてそれは激戦区を生きるソフトウェア開発メーカーが、他との差別化によって勝ち残っていくための経営戦略を解説することでもあります。特に専門誌上での学際的な解説は、その内容が稚拙にならないようにすれば難解になり、あまりに平易な表現は掲載誌の語彙レベルを下げることにもなりかねません。その上、メーカーは他社との差別化を目指し、ユーザーは企業の垣根を越えた互換性を期待するジレンマの中、両者の利害は必ずしも一致しないことが多いことから、どのようにすれば共感を得られるのか悩まされました。このきわめて基本的で利益相反な問いに十分な解説ができたかどうか確信が持てませんが、ぜひ8月のQDT誌をご覧ください。
さて弊社は、2018年5月9日をもちまして14年目を迎えます。どのような組織にも必ずミッションが存在します。お客様に満足していただくことこそが、弊社のミッションであります。創業当初の志にほころびはないか、失敗を恐れることなく新しいことにチャレンジしているか、決してあきらめない精神を持ってたゆまない努力を続けているか、この決して簡単ではない問いを今一度自問自答しつつ、弊社の競争力の根源は何かを、そしてビジョンはどこを向いているのかをミッションステートメントとして内外にアピールする仕事を組織の代表として今後も継続してまいります。 起業以来、ミッションステートメントの訴求の場としても論文投稿、学会発表、講演活動のいづれかを毎年努めて行ってまいりました。その起源はかれこれ30年間続く恩師堀祥二先生(香川県高松市開業)とのご縁にあります。先生との懐かしくもどこか恥ずかしくもある初陣は、1992年に発表した「切歯乳頭とハミュラーノッチを基準とした全部床義歯製作法に関する研究」という論文でした。現在も多方面でご活躍の堀先生には学会誌や学術大会に触れるこのような機会を与えていただき心から感謝しております。当時堀先生は36歳、私は25歳でした。有歯顎者60名と無歯顎者30名を対象にした予備実験や標本計測は、実に孤独で地味な休日返上の難行であり、時に逃避したくもなりましたが、その苦行を乗り越えて参加する学術大会は、新しいアイデアを持ち寄って社会的意義のある新たな価値を創造し、社会に大きな変化をもたらそうとしている自発的な人や組織で満ち溢れているまさにオアシスのような場所でした。初めて遭遇した「ザ・アカデミック」の感動は、その後の人生を大きく変えることになっています。当時の堀先生との出会いには、この難行苦行を堪能することになる覚悟が必要だったのだと感じます。ともすれば日々枯渇しそうな情熱が奮い立つ機会を享受するために、今後も多くの刺激を与えられたり、与えたりする機会を享受するために積極的な参加を継続してまいりたいと考えております。
さかのぼること、2002年に何気なく目にした日経デザインという商業誌上が、私とラピッドプロトタイピングとの出逢いになりました。それ以来、ライフワークにしてきたデジタル三次元造形は、少しの違和感を抱きつつも近年ようやく機が熟しはじめたと感じます。機が熟してきた今だからこそ、より多くの方とこの「違和感」について共有する機会が必要ではないかと感じています。 工業界には古くから、CADオペレーターとCADエンジニアというそれぞれ重要な役割を担う担当者がいます。一般的にオペレーターとは、現場で直接機械の操作を行なう担当者を意味し、特に、マニュアルなどに従って定型的、反復的な作業を行う者や、作業内容などの指示を受けてその通りに操作を実行する者を指します。 オペレーターはその機械の内部でどのような機序によって作業が行われているのかを考えることよりも、それを操作するコツや、勘どころに精通して生産性を高めることがそのスキルアップになります。一方で、エンジニアとは、専門的な才能や技術を持った者を指し、機械、電子、情報、化学などの工学分野や数学、物理学などの理学分野の知識を持ち、有用な物・工程・システムなどを設計・開発・製造する実践者と定義することができます。エンジニアは、これまで工業界で培われてきた匠の技術を効率よく機械化し、いかにして他が真似のできない独自の技術を次の世代に継承していくかがその重要なミッションです。我が国の精密産業の機械化の発展はこのようなエンジニアによってもたらされました。
さて、以上のような視点から、現在の歯科技工のデジタル化を俯瞰すると少しの違和感を抱くことになります。つまり、私が抱く違和感は、まぎれもなく我が国の「総歯科技工士」が「CADオペレーター化」へとまっしぐらに突き進んでいるように感じることです。 もしもこの状況がこれからも続けば、これまで培われてきた優れた技術やアイデアをデジタル化していく貴重な機会を我々は失うだけでなく、歯科用CADメーカーが提供する機能以上のことができない歯科技工オペレーターの技術水準とその未来は、歯科用CADメーカーが決定することになるでしょう。
今一度この道が、私たちが望むデジタル化の道なのか、これが国民が望む歯科の将来展望なのかを考える機会が必要な時期に来ています。我が国には、優れた技術を持った、世界に誇れる歯科技工士がたくさんいます。歯科技工のデジタル化とは、これらの優れたアナログ技術を競い合ってデジタル化していくことです。そして、それをデジタルという新しい記録媒体で継承していくこと、次の世代に残していくことです。まさか歯科用CADソフトの使い方説明書マニュアルを次の世代に残していくことでは決してないはずです。 このシンプルな命題の解に気づくことができた人材は、必ずや汎用CADの必要性に気がつくだけでなく、その「生産管理に必要な患者データベース」や、必要があれば「それらのデジタル作業効率化プログラミング」へとパラダイムが遷移していきます。このような視野を持つ歯科技工士が輩出される時代が来ることを私は心から熱望しています。2018年の今、アナログを捨ててデジタルを選択した時代に生きる我々の責任とは何か、我々が本当に選択すべきデジタル化への道とはどのような方向なのかを示していく活動に全力で取り組みたいと考えております。
2018年5月吉日
清潔、賢明、感謝
2014年までの9期を振り返って
弊社はこの5月で9期を迎えようとしています。思えば激動の8年間ではなかったかと感じています。創業からの3年間は、何をして良いかわからずに手当たり次第に仕事を受注し、がむしゃらにプログラミングをこなす毎日に明け暮れておりました。それこそ『眠ると負ける我慢の毎日』があっという間に過ぎ去っていったように思います。
このような折り、香川県三豊市小山写真館の小山昌昭氏にお逢いすることができ、写真スタジオの応援をさせていただくことができる機会に恵まれました。現在、写真館支援システムPARKERはFileMakerProから卒業して、クラウドPARKERとして、全国のスタジオ写真館のお客様にご愛用いただいております。草創期には、特にこれといって主力製品といえるものがなく、受注した案件ごとにプログラミングと納品を繰り返しておりましたころのことを思いますと、このPARKERの完成と発展によって、ソフトウェアメーカーとしての第一歩を踏み出させていただくことができたのではないかと、いまさらながらに育ててくださいましたお客様各位に深く感謝いたしておりますとともに、今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう心よりお願い申し上げます。
時を同じくして2006年頃には、歯科医療情報管理システムを開発しておりました経緯から、東京歯科大学有床義歯補綴学講座櫻井薫教授と衛生学講座松久保隆教授にお逢いさせていただく機会を賜り、口腔衛生学教育や講座内のITシステム構築に微力ながら参画させていただきました。また、中野田の恩師でもあります、浜田泰三広島大学名誉教授との歯科検診システムは一般財団法人淳風会健康管理センターにて現在も稼働いたしておりまして、弊社の企業理念にご賛同くださいました教授の皆様が大変貴重な機会を幾度となくお与えくださりつつ弊社の草創期をお支えくださいました。 今思えば、システム構築の実績を積む機会をお与え下さったことで脈々と受け継がれておりますノウハウはこの頃に培うことができたのではないかと、あらためて心より感謝いたしております。
またこの頃2006年4月には、歯科医師臨床研修必修化が開始され、弊社にとりましても大きな好機となりました。中でも岡山大学卒後臨床研修センターの河野隆幸助教に採用いただきましたRESIDENTは大学病院内で高く評価いただき、それをきっかけにして、2008年には高柴正悟歯周病態学分野教授との大学院教育カードシステムe-Grad、さらに2009年にはインプラント再生補綴学分野、現岡山大学歯学部長窪木拓男教授との医歯薬学系大学院ポートフォリオPOSGRA、片岡仁美地域医療連携担当教授との医学部経験記録データベースの構築へと岡山大学内で弊社製品が次々と開花し、このような貴重な経験は弊社の教育用ポートフォリオシステムの礎となりました。特に窪木拓男教授によって平成19年度文部科学省に採択された組織的な大学院教育改革プログラムの実施取り組みをお支えすることができたことは、弊社の歴史に残る大きな業績となりました。この時代に開発した製品の多くは、2011年2012年と発展的に継続した開発を続けて現在にいたっております。これもひとえに弊社をご愛顧くださるお客様のおかげによるものと心より感謝申し上げます。
本年、2013年には九州歯科大学中原孝洋助教とインターネット就職支援システムを構築し、SQLインジェクションツールによるWEBサイトの脆弱性の対策と改善についてかなり深く掘り下げて対応できるようになりました。九州歯科大学経営管理部各位のご協力とご理解に深く感謝申し上げます。
さて、特に本年は我が社にとりまして、CAD/CAM事業元年ともいえる年になりました。2月には三井化学株式会社に対して中野田がアドバイザリー契約を締結し、弊社が三井化学の歯科事業に参画することになりました。三井化学は6月には米国DENTCA社の株式の過半数を取得し、6月にドイツHeraeus社を543億円で買収して7月には歯科材料事業の譲受を完了し、本格的に参入を果たしております。6月には東京医科歯科大学水口俊介教授と株式会社GC研究所長が東京から弊社にお越しになり意見交換会を行いました。弊社としましては、日本発世界一を目指して今後もますます密接にお手伝いさせていただきつつ、積極的にこの領域の事業を進めてまいる所存でございます。
このような潮流を経て、インサイドフィールドでは、来る2014年の午年、PARKERはデータベースの強化とインターフェイスのHTML化、並びにGoogleとの親和性を高めてより安価でより高品質な製品へと発展させてまいります。また教育用ポートフォリオシステムは2014年初頭に東京慈恵会医科大学での採用を機会に今後もますます医歯薬保健教育領域における専門性を高め、使いやすいシステムへと発展させてまいります。また、歯科用CAD/CAM事業は今後弊社の主軸になるよう特に注力することで世界に誇れる国産システムを市場に投入していきます。それに伴い、歯科技工事業にも着手してまいる所存です。また、来春からは、微力ながら母校のお役に立てるよう優秀な人材の育成と後進の輩出にも尽力していきます。
最後になりましたが、弊社には誇れる優秀なスタッフと奇才のよきビジネスパートナーと呼べる仲間がおり、このような恵まれた人材環境の中にあってこそ集中して励むことができる仕事があることを幸せに思うと同時に、よき仲間に心より感謝しています。来年も、継続してこれまで以上にお客様のお役にたてるよう、そしてその結果、皆がより豊かになれるように必死になって働いてまいりますので、ご協力とお力添えをお願い申し上げる次第です。
2014年1月吉日
大阪歯科大学歯科技工士専門学校
(現大阪歯科大学医療保健学部口腔工学科)
2 Years Course
国立広島大学歯学部附属病院歯科技工士研修生
1 Year Course
国立大学法人香川大学経済学部情報管理学科
4 Year Course
国立大学法人広島大学大学院医歯薬学総合研究科
展開医科学専攻顎口腔頚部医科学講座
4 Year Course
国立大学法人広島大学
博士(歯学)
歯科技工士免許登録番号第六六四六六号
認定士登録番号第六五号
社団法人香川県歯科医師会立香川県歯科技術専門学校
9 Years
株式会社インサイドフィールド
株式会社デンティクス
東京医科歯科大学大学院
全部床義歯補綴学分野
水口研究室
MISC■ 中野田紳一,木村 彩,窪木拓男
第22回日本歯科医学会総会 . 大阪, 日本. 2012.11.9-11.
発表日 2012.11.11. 日本歯科医師会雑誌; 65(5): 88, 2012.
J-GLOBAL ID:201202288887131580 整理番号:12A1193144
MISC■ 樋口隆晴,黒﨑陽子,三野卓哉,徳本佳奈,沼本 賢,土佐郁恵,中野田紳一,前川賢治,窪木拓男:
岡山歯学会雑誌 37 ( 2 ) 88 - 88 2018.12
J-GLOBAL ID:201902228635245725 整理番号:19A0293685
招待講演■ 中野田紳一 PDF
東京都歯科技工士会日技生涯研修. 東京, 日本.
2023.4.9.
特許■ 中野田紳一
分割復位式ワークを使った追加工による歯科技工物の製作方法
【整理番号】P20230307【提出日】令和5年3月7日
招待講演■ 中野田紳一: 部分床義歯完全デジタルワークフローのためのボックスジョイントテクニック ハンズオンセミナー 5 Hands-on Seminar 5:公益社団法人日本補綴歯科学会第 132 回学術大会. 神奈川, 日本. 2023.5.19-5.21. 発表日 2023年5月21日(日)9:00~12:00(180分). 公益社団法人日本補綴歯科学会第 132 回学術大会 プログラム・抄録集; 119, 2023.
優秀賞■ 中野田紳一:
健康管理に貢献する生体適合性IoT製品(バイコム=Biocompatibility)と専用プラットフォーム製品
(ケアバース)の提供:香川県ビジネスチャレンジコンペ2023. 香川 日本. 2023.9.13. 発表日 2023年11月1日.
「人工知能(Artificial Intelligence; AI)」には2つの視点があり、それは人間の機械(ロボット)を作ろうとする研究と、人間がすることをICTにさせようとする研究です。広義のAIの歴史は古く、ここでは特に機械学習について解説します。人工知能の特徴は「学習(与えられた情報の中から有用な知識を発見して蓄えていくこと)」と、「推論(蓄えた知識を使って結論を予測すること)」です。たとえば、年収Xと資産額Yのような2変数の回帰分析を行い線形近似曲線を得ます。サンプル数nの増加量依存的に関数の傾きや切片が刻々と変化することを想像できるのではないでしょうか。これが学習です。そして、このようにして得られた関数を使って、次に与えられる年収X値から資産額Y値を予測します。これが推論です。年収を聞くだけで、ある程度の確率で資産額を言い当てることができるようになるわけです。このY値の確からしさはサンプル数nの増加量依存的であることも理解できるのではないでしょうか。このような学習の方法を「機械学習」と言います。機械学習の応用範囲は広く例えば、Webページに表示される広告や、文字入力支援補助機能あるいは、類似の形を調べたりするのにも活用されています。
深層学習も機械学習と同様に「学習」というプロセスを経て、「推論」できるようになります。機械学習が発展していく中で、確率統計論を使う機械学習には限界が見えてきました。そこで複数の推論をもとに、最終的な推論の確からしさを判定して出力するニューラルネットワークという考え方が用いられてきました。たとえば3つの推論の合計が3以上であれば、ニューラルネットワークの出力は1を最終的な推論として出力します。このときに特徴的な仕組みがそれぞれの推論の重要度に応じて重みづけをすることです。このようにあいまいで高度な処理を行う際には、理想的に重みづけされた推論をたくさんのレイヤー状に繋ぎ合わせると、良好な結果が得られるということが、人間の脳の働きを理解する上でとてもわかりやすいニューロンを数学的に模したモデルで説明され、これが機械学習からのブレイクスルーになったようです。このレイヤーを何層にも深くつなぎあわせて利用するということからディープラーニング(深層学習)という呼び名も出てきたようです。
深層学習では、大量のデータをデータベースにインポートして、ある一定の法則に対して「重みづけ」を最適に調整したネットワークとして“学習済みモデル”を構築します。これが「学習」フェーズです。通常、この「重みづけ」は「答え合わせを何度も繰り返して試行錯誤的に人間が調整(チューニング)する」ことになります。そしてこの“学習済みモデル”に新しいデータを入力することで、得られる出力が「推論」フェーズです。より確かな推論を得るためには、より確かに調整された学習済みモデルが必要になります。
アルゴリズムとは、課題を解決するための手段を手順を追って一般化し、他に応用しようとする計算手順です。プログラムがどのように動作すれば、どのような具体的な方法でどのような問題を解決できるのかをプログラム言語を使って定義します。
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